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予告編
作品紹介
空前の推し活ブームだ。その勢いは、男性の聖域とされていたストリップにも及ぶ。いわゆる [スト女] の急増である。女性が女性の真の美しさを発見し、覚醒する。そんな目覚めた人々に熱いエールを送る、エンパワードムービーが誕生した。
突然ストリッパーになりたいと言い出した高校生の娘と、父親の葛藤と和解。映画評論家・塩田時敏の初監督作品である。映画史に於いてストリッパーものは一つのジャンルを形成する。 日本初のカラー映画である木下恵介 「カルメン故郷に帰る」 から、森﨑東「喜劇 女は男のふるさとヨ」に始まる “女” シリーズや「喜劇 特出しヒモ天国」、むろん神代辰巳 「かぶりつき人生」「一条さゆり 濡れた欲情」等は言うに及ばず、森田芳光「(本)噂のストリッパー」等々名作あまた。それらやデミ・ムーア 「素顔のままで」、さらにはヴァーホーベンの 「ショーガール」にまでオマージュ捧げつつ、これまでのスト映画とは明らかに一線を画す映画が 「りりかの星」 なのだ。
ヒロインにはマドンナレーベルの大人気ミューズ、水戸かなが映画初主演。 そして、「ヴァイブレータ」「夕方のおともだち」等のベテラン監督・廣木隆一が父親を熱演。のみならず、あの日本一忙しい監督・三池崇史がマサカの役どころで怪演。 これまで多数の三池映画、廣木映画に役者として出演してきた塩田時敏に対する、お返し、お付き合いの域を越えたその存在感は、さすがの一言。また、黒沢清映画などで知られる名手撮影監督・芦澤明子の手になるフイルム撮りにも注目。脚本はかつて廣木隆一と協働した沢木毅彦。
原点の無声映画にして、映画の最前線に踊り出た “踊り子” 映画、必見なり。
ストーリー
18歳になった娘の萌は、突然ストリッパーになりたいと言い出した。激しく動揺する父親の泰造。人の命を救いたいという萌の望みを叶えるべく、看護専門学校への入学資金を積み立てているのに。理由も知らされぬまま、幼い頃よりの父との二人暮し。誰よりも好きなお父さん。だが、ネットで拾った映像を見たとき、萌の夢が変わった。それは、被災者を慰問する踊り子・小室りりかの艶やかな舞い姿。夢だって変わる。萌の母の秘密とは。眠れぬ夜を過ごす父はあるとき、女体の胎内にも似ためくるめく異界へと誘われる。そこで体感したこととは──。
現世へと回帰した父・泰造は、娘・萌に言った──。
キャスト
廣木隆一 (泰造)
1954年1月1日、福島県出身。82年「性虐!女を暴く」で監督デビュー。シティピンク派として脚光を浴びる。94年サンダンス・インスティテュートに渡米。「ヴァイブレータ」(03)にて国内外で名声を確立する。就中ヨーロッパでの人気が高く、以降「さよなら歌舞伎町」(15)「彼女の人生は間違いじゃない」(17)「月の満ち欠け」(22)など多作を誇り、いまや押しも押されもせぬ日本映画界を代表する監督の一人となった。「MIDORI」(96)「美脚迷路」(01)他には塩田時敏が出演。自身、俳優としても 「いたいふたり」(02、斎藤久志監督)、「色即ぜねれいしょん」(09、田口トモロヲ監督)他に出演している。
水戸かな (萌)
1984年11月1日生。2017年マドンナレーベルの専属女優として華やかにAVデビュー。2021年11月より浅草ロック座にてストリップ出演を果たし、各地の劇場を回り人気を博している。Vシネマでは、「17歳は止まらない」(23)「BAD CITY」 (23)等のプロダクション・デザイナー (美術) 貝原クリス亮が監督した 「農家に嫁いだ女 禁断の収穫」 (21、ハピネットピクチャーズ)にも主演した。趣味はゴルフ、特技はダンス。
三池崇史 (末期の客)
1960年8月24日、大阪府出身。1991年Vシネ「突風!ミニパト隊」にて監督デビュー。「DEAD OR ALIVE―犯罪者―」(99)で伝説を作り、「オーディション」(00)にて国内外で大ブレイク。以降、全世界の映画人やファンに影響を与え、「殺し屋1」(01)「スキヤキ·ウエスタン ジャンゴ」(07)「一命」(11)「初恋 FIRST LOVE」(20)等々多作する他、海外ドラマ、iPhone映画、歌舞伎や舞台演出もと世界一多忙な監督として知られる。「カタクリ家の幸福」(02)「極道恐怖大劇場 牛頭」(03)他には塩田時敏が出演。自身、俳優としても「ホステル」(05、イーライ・ロス監督)「隣人13号」(05、井上靖雄監督)他に出演している。
長谷川千紗 (スト女の妖精)
1982年4月1日、高知県出身。早稲田大学時代から演劇活動を開始、のち映画の世界へ。「憂鬱な花」(16)「女の仕事」(23)などでインディーズムービーのミューズと目されながら、「くっつき村」(21、ゆうばりファンタ優秀芸術賞)からは監督にも進出。「エターナルラブが蔓延する日」(23)が公開中。
小室りりか (小室りりか)
1976年7月31日生。1996年AVデビュー。『ギルガメッシュないと』(現テレビ東京)で人気を博し、96年11月より浅草ロック座所属のストリッパーとしてステージに。今も現役の実力トップダンサーで活躍。ドラマ出演「渡り番頭・鏡善太郎の推理」(00)「湯けむりスナイパー」(09)。
スタッフ
監督:塩田時敏
1956年1月1日札幌出身。白夜書房の編集者から映画評論家へ。在職中よりZOOM-UP映画祭を引継ぎ、90年にはゆうばり国際ファンタスティック映画祭の立ち上げより参加。その一方、塚本晋也、廣木隆一、三池崇史、ギャスパー・ノエ他の作品に出演。著書に『こんなに楽しい 世界のファンタスティック映画祭』『韓国映画この容赦なき人生』等。「りりかの星」で監督デビュー。
脚本:沢木毅彦
1961年3月27日、北海道岩見沢出身。学生時代ZOOM-UP映画祭への参加を契機に、ライターとして80年代AV草創期から専門誌でインタビューやレビューを手掛ける。その一方でピンク映画やAVの脚本も。90年「パンツの穴 本牧ベイでクソくらえ」で一般映画にも進出。 廣木隆一監督とは「やりんこチエ いちじく診察台」(85)「白衣調教」(86)の脚本で参加。
撮影:芦澤明子(JSC)
東京出身。自主映画の制作、ピンク映画の撮影を経て、83年にカメラマンとして独立。「わが母の記」(12)では数々の撮影賞を受賞。就中、「散歩する侵略者」(17)「旅のおわり世界のはじまり」(19)など、黒沢清作品の撮影監督として海外でも名を馳せる。近年の主な作品にインドネシア映画「復讐は私にまかせて」(21)や、「レジェンド&バタフライ」(23)「春画先生」(23)など。
照明:永田英則
1971年、静岡県出身。近年の主な作品に、「旅のおわり世界のはじまり」(19)「かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦」(19)「影裏」(20)「子供はわかってあげない」(21)「この子は邪悪」(22)「レジェンド&バタフライ」(23)「1秒先の彼」(23)「春画先生」(23)など。
コメント
この映画では、突如「ストリッパーになりたい」と言い出した高校生の娘と父親の葛藤が描かれている。両者の対立がどんなに深まっても、娘の高まるストリップへの憧れが忘れられない。
改めて、プロフェッショナルが詰まっているストリップが私は大好きだ。
井上咲楽
タレント
この映画では、突如「ストリッパーになりたい」と言い出した高校生の娘と父親の葛藤が描かれている。両者の対立がどんなに深まっても、娘の高まるストリップへの憧れが忘れられない。
改めて、プロフェッショナルが詰まっているストリップが私は大好きだ。
井上咲楽
タレント
広木(廣木)監督、ズームアップ、塩田さんと、沢木さんと大昔少しだけ接点があった方々の思い出に浸れて、サイレントは良いなと惚けて観ていたら、油断ならないラストシークエンス。まるで映画「砂の器」の最後の父子の旅のような、近松の心中物のような陶酔の異世界に私を誘ってしまったのだ。侮っていた!
荒木太郎
監督
荒木太郎
監督
見えそうで見えない。かぶりつきから身を乗り出す。さわりたいけどさわれない。このモヤモヤする感じ。ただ見てるだけ。それがエロい。ずっと見てられる。久々にストリップのあの高揚感を思い出した。塩田さん、最高や!
いまおかしんじ
監督
いまおかしんじ
監督
女の夢は、すべて乙女の夢である。この映画、観られて嬉しかった。
岩井志麻子
作家
岩井志麻子
作家
踠(もが)き悶える人たちの静かな放熱に戸惑った。
『りりかの星』は真面目で変態で最高だ。
サトウトシキ
監督
サトウトシキ
監督
何と言っても [りりか] の裸体が美しい。
長年の塩田さんの思いが愛おしさを持って映像として焼きついている。
佐藤寿保
監督
佐藤寿保
監督
廣木さんの眼差しは『ベニスに死す』の美少年を見つめるダーク・ボガードのようで、老いと情念の葛藤が悲しさに満ち溢れ、見る者を圧倒する。
フィルムとデジタルを融合させ、懐かしさと生々しさをない交ぜにしながら、突き抜けた官能世界にまで持っていく塩田さんのアナーキーな手腕は韓国のチャン・ソヌ監督に匹敵する。
何より、水戸かなさんのステージを見るだけで、この映画を共有できる幸福。
素晴らしい。
瀬々敬久
監督
瀬々敬久
監督
レビュー
塩田時敏『りりかの星』に触れる
by 切通理作(文芸評論家、脚本家、映画監督)
ストリッパーを目指すことにした18歳の娘と、それに頑として反対する父親との葛藤を描いた作品。
全編サイレント映画で、ある趣向が凝らされているが、それを言ってしまえば28分の短編の多くをネタバレしてしまうことになるので、書けない。
監督は映画評論家の塩田時敏。夕張でファンタスティック映画祭を担ってきた人として知られるが、筆者にとっては「映画の城」などで80年代のピンク映画を応援してきた頃の記憶がホットなものとして印象に残っている。
今回の内容も「映画評論家の撮った映画で、題材がエロ」とくれば、私も他人事とは思えないものがあるが、しかし本作の場合、現実空間のエロはチラリズム程度であり、あくまで舞台のストリップがフィーチャーされる。
ストリップ自体を日常空間と対比した夢空間として示す演出が凝らされており、長谷川千紗が劇場の見世物小屋感を高める水先案内人の役を務めている。
多くの男性が弱った時にストリップのミューズが救済役を担い、それは現実に人を助ける事とも等価なのだとさりげなく示される。
ヒロインを演じる水戸かなは、高校を卒業したばかりの役にしては少し年齢が行っている気がするが、そういう人が冒頭、セーラー服を着るレトロ感もまた味わいなのだろう。実際にストリップのミューズでもある。
彼女があこがれているストリップのミューズ役が小室りりか。舞台上の出演に限られているのは、撮影上の都合もあったかと思われるが、結果的に映画自体がその存在をリスペクトするという構造になっている。
ストリップのミューズを「星」に喩える感覚は、梶原一騎の「巨人の星」の「星」がもとは梶原が若い頃に恋したストリッパーからとられた逸話を思い起こさせ、やはり夢を感じさせる。
父親役はエロ風味のおしゃれな映画をいくつも撮ってきた、いまや巨匠と言っていい映画監督の廣木隆一が演じている。
映画監督がといえばもう一人、三池崇史がちょっとしたアクセントの強い役をやっている。
脚本はAV創世記から雑誌ライターとして活躍、ピンクやロマンポルノの脚本も書いている沢木毅彦が務めている。監督の塩田自身がかかわっていたエロ映画雑誌も劇中に登場。短い中にエロ文化の歴史が込められているといえよう。
映画界のベテラン芦澤明子キャメラマンが16ミリフィルム含む撮影を担い、編集はロマンポルノ時代からのキャリアを持つ鵜飼邦彦が担当。小品仕立てだが、しっかりとした技術によって支えられている。
8年の歳月を経て作られたというこの作品。製作者であるぴんくりんくの太田 耕耘キが「完成したこと自体が尊い」と言っていたが、エロをストレートではなくユーモアに包んだ夢のある世界として提示するどこか可愛げのある内容となっている。
こうした作品が、関西のピンク映画情報のフリーペーパーであるぴんくりんくのレーベルから生み出されること自体、せちがらい世の中にもまだこんな、隙間から世界を覗いて、日常に花を咲かすようなたくらみが存在しているかのようで、嬉しいものがある。
切通理作メールマガジン『映画の友よ』vol.227 より転載
『極道恐怖大劇場 牛頭』
21年ぶりの日本凱旋!初の35ミリ劇場公開!
今、超カルトの封印が解かれる!
21年ぶりの日本凱旋!
初の35ミリ劇場公開!
今、超カルトの封印が解かれる!
V-シネマながらも、カンヌ国際映画祭監督週間で上映、という快挙からなんと21年。映画祭やイベント等で数回上映されただけの、三池崇史映画の中でも、カルト中の幻のカルトとされていた『極道恐怖大劇場 牛頭』が、ついに正式日本劇場初公開される時がやってきた!
しかも、今回はオリジナルの35ミリプリントでの上映。ほとんど映写機を通ってないので、4Kレストア版以上の (?!) 美しさ。劇場の大スクリーンで見てこそ『牛頭』の底知れぬ妖しさが、骨の髄まで体感できようというもの。いまだに古びる事のない、いや、いまこの時代でも、その先を行ってる伝説のカルト『牛頭』を、是非ご堪能ください。
出演:曽根英樹 (現 曽根悠多) 、哀川 翔、吉野きみ佳 (現 吉野公佳) 、(謎)as牛頭
監督:三池崇史
脚本:佐藤佐吉
2003年╱129分╱カラー╱ビスタ╱DTS╱R-15+
配給:プロダクションGOZU ぴんくりんくフイルム
6.15 SAT『りりかの星』と同日上映
シアターイメージフォーラムほか全国順次公開
6.15 SAT
『りりかの星』と同日上映
シアターイメージフォーラム
ほか全国順次公開
まさに21年目の奇跡!
あのヤクザホラーがとうとう劇場公開されることになりました。
カンヌに招待され世界中で上映されながら日本ではVシネマでのリリースのみ。
それは当初からの決まり事ではあったもののいつの日か劇場でとの願いがようやく叶いました。
自画自賛ではありますがまぎれもなく佐藤佐吉脚本作品としての最高傑作。
骨の髄まで覚悟してご堪能ください。
佐藤佐吉(脚本家・監督・俳優)
監督コメント
小室りりかで漠然と映画でも撮りたいとは思っていた。それが様々な人々との知遇、協力によってこうして形を成した。まさか映画に成ろうとは思ってもみなかったが。
だがしかし、あれやこれやの紆余曲折、これが映画製作というものか。この成立には相当の時間を要しており、我が映画人生の反映ともなっている。廣木隆一、三池崇史両監督の出演が叶ったのもその一つ。多忙さで一、二を競う二人が共演出来たのは奇跡に近いだろう。
型にはまった俳優よりは素人とミュージシャンがいい、とは大島渚の言だが、無声映画というシバリゆえもあり両監督にオファー。素人どころか、的確な演技の判断に関してはプロ中のプロである。スタッフに関しても、私が昔ピンク映画の雑誌に携わっていた頃より、ピンクの現場から叩き上げて来た強者が揃ってくれた。感謝に堪えない。
批評と実作は別物と思われるだろうが、もとよりそれは車の両輪と考える私にとって、この作品は批評の延長ではある。思えば我が師、故・松田政男も大島映画「絞死刑」を代表とする数々の映画に出演し、「略称 連続射殺魔」等のプロデュースも実践していたではないか。本作を松田政男に捧ぐにしくはない。ともあれ近年の映画は、映画が本来併せ持つ官能性に著しく欠如した作品が多い、ように評論家の私の目には映る。だったら自分で、だ。
私がこの映画で目指したものは二つ。一つは、エロスの持つ生命力、ヴァイタリズムを感じて欲しいということである。エロスこそは生命の根源。なのに、今の時代あまりに精気がない。AIだってヴァーチャルだって、それは不可欠なはず。
それといまひとつ、近頃は争い、諍いが多すぎる。SNSの世になってなおのこと。 要らぬ対立が蔓延り、狂騒的正義が暴走し、その最たるものが戦争である事は言を待たない。 「りりかの星」では父娘の諍いに極小化しているが、互いの想いに立つことで “円” になり、“輪”になり、和解を迎えて欲しいのだ。
そりゃ甘いって?! 確かに夢想かもしれない。だがしかし、いいじゃないか、それこそ映画なんだから!ともあれ楽しんで頂けたなら、それだけで有難い。